育成就労制度では、一定の要件の下で、外国人本人の意向による転籍が認められます。受入企業には、転籍に関する制度上の要件を理解するとともに、人材から選ばれ続ける職場環境を整えることが求められます。
本記事では、「育成就労制度運用要領」(令和8年8月改正版)を基に、転籍に関する要件と受入企業の準備事項を整理します。STEP5~7及び金融機関の確認事項には、職場定着や事業継続のための実務上の提案を含みます。これらすべてが法令上の義務となるわけではありません。
今回解説する内容
STEP1 転籍制度の基本と紹介制限
STEP2 本人意向転籍の主要な要件
STEP3 やむを得ない事情による転籍
STEP4 不当な引留め・妨害リスク
STEP5 「4つの不満」の早期把握
STEP6 面談と相談記録
STEP7 業務継続と補充採用
STEP8 外部機関の確認視点
STEP9 実務チェックリスト
alt="転籍制度・人数枠・優良実施者制度の解説図"
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STEP1 転籍制度の基本構造と「本人意向転籍における職業紹介等の制限」
職業紹介等の制限において認められる機関
STEP2 本人意向転籍の主要な要件と転籍先の受入条件
要件分類:
①分野別在籍期間
(制限期間)
具体的な基準:
転籍前の同一企業において、産業分野ごとに定められた1年以上2年以下の範囲内の期間、継続して就労していること。
※分野別の転籍制限期間が1年を超える場合には、所定の待遇向上措置が必要です。受入企業が転籍制限期間を1年とする場合は、その旨を育成就労計画に記載する必要があります。
実務上の性質:
原則として、転籍前後の業務は「同一の業務区分」に限られます。
要件分類:
②技能・日本語
の能力要件
具体的な基準:
技能検定試験基礎級等の技能試験と、日本語能力を確認する試験について、分野別運用方針で定める試験・水準を満たすことが必要です。
※すべての分野で日本語の要件が一律にN5・A1となるわけではありません。
実務上の性質:
育成就労期間が3年を超えて延長されている者は、本人意向による転籍の対象外です。
要件分類:
③転籍先における
転籍者の割合制限
具体的な基準:
原則として、転籍先における算定対象の育成就労外国人数(転籍後)に対し、本人意向による転籍者の割合が「3分の1以内」であることが必要です。
【重要】法令上の指定区域内に住所を有する実施者から、指定区域外に住所を有する実施者への本人意向転籍には、さらに「6分の1以内」の基準が適用されます。法人の住所は本店所在地で判断します。
※転籍先の算定対象人数が5人以下の場合、この「6分の1以内」の基準では、対象となる転籍者1人までが認められます。この場合も、「3分の1以内」という基準は満たす必要があります。
※割合の算定には、やむを得ない事情による転籍者など、規則上の除外対象があります。単純な在籍人数ではなく、所定の算定方法で確認してください。
実務上の性質:
転籍先企業の計画認定に関する受入割合の基準です。新規受入れの計画認定にも関係します。
【転籍先の確認】
優良な育成就労実施者であることは、新たな計画の認定申請時と育成就労の開始時の双方で確認が必要です。また、転籍者の受入割合は、本人意向転籍の計画だけでなく、転籍先における新規受入れの計画認定にも関係します。
また、本人意向転籍の計画認定時には、転籍先が法第8条第1項の認定を受けた計画に基づき、現に育成就労外国人を受け入れている必要があります。受け入れている育成就労外国人が、転籍者等のみである場合は、この基準を満たしません。
STEP3 「やむを得ない事情」による転籍と支援対応
STEP4 不当な引留め・転籍妨害行為における重大な違法リスク
行政指導・認定取消しのリスク
転籍や受験を妨害する行為は、育成就労計画の認定取消しの対象となります。妨害行為が確認された場合に、必ず自動的に取消処分が行われるという意味ではありませんが、受入企業にとって重大な法的リスクです。
育成就労計画の認定が取り消された場合、当該企業に在籍するすべての育成就労外国人について、その企業で育成就労を継続することができなくなります。また、取消しの日から5年間は、新たな育成就労計画の認定を受けられなくなります。
ただし、これは、当該企業が雇用するすべての外国人の在留資格が自動的に失われるという意味ではありません。在籍する育成就労外国人については、監理支援機関の協力を得て、円滑な転籍に向けた対応を行う必要があります。
STEP5 人材離職を未然に防ぐ「4つの不満」の早期把握と改善
STEP6 定期面談の仕組み化と「相談記録」の活用
STEP7 転籍発生を前提とした業務継続計画(BCP)と補充採用計画
STEP8 外部の伴走3機関(金融機関・行政書士・監理支援機関)が確認すべき視点
金融機関が確認すべきこと(事業性評価・融資審査の視点)
行政書士・監理支援機関が確認すべきこと(制度対応・実務支援の視点)
STEP9 実務担当者チェックリスト
主な一次資料・確認箇所
出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度運用要領」第4章(令和8年8月改正版/外国人技能実習機構HP掲載)。下記は本文頁番号です。
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育成就労制度運用要領 第4章(一次資料PDF)
次回は、第8回「人数枠・優良実施者制度」です。
育成就労制度では、産業分野の受入見込数や実施者の人数枠等を確認する必要があります。次回は、人数枠の考え方、優良実施者の要件、企業が準備すべき事項を整理します。
公表資料に基づく制度の整理、育成就労計画や在留手続に向けた準備についてご相談を承ります。労務・税務等については、必要に応じて各分野の専門家と連携します。