第7回では転籍制度の要件と対応を解説しました。第8回では、企業の事業計画や人員配置の前提となる「受入人数枠」の算定と、「優良な育成就労実施者」の要件・確認手続を整理します。
育成就労外国人の受入人数枠は、常勤職員数だけでなく、監理型・単独型の区分、単独型における継続安定体制、優良要件への適合、指定区域への該当などによって異なります。分野別の追加基準や人数枠の除外対象も確認したうえで、受入計画を立てる必要があります。
本稿は令和8年8月改正版の運用要領に基づく制度解説です。実際の申請時には、その時点の法令・運用要領・分野別告示・申請様式を確認してください。
今回解説する内容
STEP1 受入人数枠の基本構造と適用範囲
まず、自社の受入れが監理型か単独型かを確認します。
以下の表は、監理型育成就労と、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣が「継続安定体制」を有すると認めた単独型育成就労に適用される基本人数枠です。すべての受入形態に共通する表ではありません。
常勤職員数
1人
基本人数枠
3人
確認するポイント
指導・支援体制や分野別基準も満たす必要があります。
常勤職員数
2人
基本人数枠
6人
確認するポイント
常勤職員数だけで受入れの可否が決まるわけではありません。
常勤職員数
3~30人
基本人数枠
9人
確認するポイント
9人は枠の上限です。既存の算入対象者も含めて確認します。
常勤職員数
31~40人
基本人数枠
12人
確認するポイント
職員数の変動と既存の受入人数を確認します。
常勤職員数
41~50人
基本人数枠
15人
確認するポイント
人数枠と併せて、育成・指導体制を確認します。
常勤職員数
51~100人
基本人数枠
18人
確認するポイント
本社・支社・事業所を含む法人全体の常勤職員数で算定します。
常勤職員数
101~200人
基本人数枠
30人
確認するポイント
新規採用人数ではなく、算入対象となる受入人数全体の枠です。
常勤職員数
201~300人
基本人数枠
45人
確認するポイント
優良要件に適合する場合の人数枠は別表で確認します。
常勤職員数
301人以上
基本人数枠
常勤職員数の15%
確認するポイント
割合で算定します。常勤職員数の変動にも注意してください。
【重要:単独型の別枠・優良枠・分野別基準】
-
継続安定体制の適用を受けない単独型:
基本人数枠は常勤職員総数の20分の3(15%)です。算定結果が3人未満の場合は0人となるため、この基本枠で受け入れるには常勤職員20人以上が必要です。
-
優良要件に適合する場合:
上記の単独型は常勤職員総数の10分の3(30%)となりますが、算定結果が3人未満の場合は0人です。監理型・継続安定体制の適用を受ける単独型には、別の優良枠の表が適用されます。
-
指定区域に住所を有する場合:
所定の優良要件などを満たすと、地方特別枠の対象となります。監理型では、監理支援機関も優良であることが必要です。住所は、法人では登記簿上の本店所在地、個人では住民票上の住所で判断します。
-
分野別の追加基準:
分野所管大臣の告示で人数に関する基準が追加されている場合は、その基準にも適合する必要があります。対象となる外国人の範囲や企業単位・事業所単位などの算定方法を、該当分野の告示等で確認してください。
継続安定体制の適用を希望する単独型では、計画認定申請時に理由書と適合性を立証する関係書類を提出します。優良枠・地方特別枠の具体的な人数は、運用要領の対応する表で確認してください。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-107~4-113(規則第19条、基本枠・優良枠・地方特別枠・分野別基準)。
STEP2 常勤職員数と受入人数の算定
常勤職員は、実施者に継続的に雇用されている職員を基本とし、正社員と同様の就業時間で継続的に勤務する職員も含みます。
社会保険に加入しているかどうかだけで算定するものではありません。
常勤職員として扱って差し支えない例
-
①、 所定労働日数が週5日以上かつ年間217日以上で、週所定労働時間が30時間以上である職員。
-
②、雇用保険の被保険者で、週所定労働時間が30時間以上である職員。
上記は運用要領に示された例です。雇用契約書・就業規則・出勤簿・賃金台帳・雇用保険関係資料などで、継続雇用と所定労働日数・時間を確認します。保険加入の法令上の義務は別途確認が必要です。
常勤職員の算定で除外・個別確認が必要な人
-
除外対象:
外国にある事業所に所属する常勤職員、育成就労外国人及び技能実習生は、常勤職員数に含めません。
-
役員:
原則として職員に含めません。ただし、法人に使用され、労働の対価として報酬を受ける兼務役員等で、上記の例の①又は②に該当する場合は算入できます。
-
パート等:
呼称だけで一律に除外せず、継続雇用と勤務条件を確認します。派遣労働者は派遣先の実施者と雇用契約がないため、派遣先の常勤職員には算入しません。
-
特定技能外国人:
特定技能の外国人は、外国人であることや在留資格だけを理由に、常勤職員数から除外するものではありません。継続雇用や勤務日数・時間など、常勤職員の基準を満たす場合は、常勤職員数に含めることができます。ただし、 分野独自の人数制限では別の数え方をする場合があるため、 該当分野のルールも確認してください。
「常勤職員数」と「受入人数」は分けて計算
-
常勤職員数:
本社・支社・事業所を含めた企業全体(法人全体)で算定し、原則として事業所ごとには算定しません。複数法人が共同で行う場合などは、所定の合算方法を確認します。
-
経過措置で継続する技能実習生:
1号・2号技能実習生は、育成就労の人数枠では受入人数に算入します。3号技能実習生はこの人数枠には算入せず、技能実習制度の人数枠の規制を受けます。
-
特定技能1号外国人:
育成就労の人数枠の受入人数に一律に算入する規定として扱うことはできません。分野別基準で合算等が必要かを別途確認します。
-
枠外となる育成就労外国人:
やむを得ない事情による転籍者、所定の期間延長者、外国人の保護の観点から特別の理由があると認められる者には、人数枠に算入しない取扱いがあります。適用には計画認定申請時の説明書の添付が必要です。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-28~4-29(常勤職員の定義)、4-112~4-114(算定方法・技能実習生の取扱い・人数枠の枠外)。
STEP3 優良な育成就労実施者の要件と確認手続
優良な育成就労実施者は、技能・日本語能力の修得実績、育成体制・待遇、相談・支援、地域社会との共生、法令違反や問題の発生状況などについて、所定の基準を満たす実施者です。受入実績がない企業についても評価区分が設けられています。
初回は、育成就労計画の認定申請時に「優良要件適合申告書(参考様式第1-36号)」と疎明資料を提出し、機構の適合確認を受けます。
優良と認められた場合は、計画の認定通知書にその旨が記載されます。独立した一律の「主務大臣による優良企業認定」として説明するのは適切ではありません。
優良適合期間と継続のための手続
初回の優良適合期間は、通知を受けた日の属する年度の翌年度の12月31日までです。例えば令和9年4月に通知を受けた場合、令和10年12月31日までとなります。
継続を希望する場合は、満了する年度の実施状況報告書の提出と併せて申告書・疎明資料を提出し、再度適合確認を受けます。継続が認められると、満了日の翌日から新たに1年間の取扱いとなります。必要な申告書等を提出しなければ、期間満了で優良としての取扱いが終了します。
制度上の効果として、適用区分に応じた受入人数枠の拡大等があります。ただし、
優良であることだけで地方特別枠が適用されるわけではありません。
指定区域や監理支援機関の優良性など、追加条件を確認してください。
融資条件や採用面での評価は、金融機関・求職者等の個別の判断です。優良要件への適合によって、融資上の優遇や採用上の優位が保証されるものではありません。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-107~4-111(人数枠)、4-114~4-118(優良要件の確認・通知・継続手続)。
STEP4 優良要件の評価項目と必要な点数
評価項目と必要点数は、育成就労外国人の初回受入れからの期間に応じて異なります。自社に適用される区分を確認し、運用要領の配点表と疎明資料を突き合わせます。
受入実績に応じた総得点の基準
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受入実績なし、又は初回受入れから1年未満:
56点満点中40点以上。
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初回受入れから1年以上2年未満:
72点満点中51点以上。
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初回受入れから2年以上3年未満:
85点満点中60点以上。
-
初回受入れから3年以上:
100点満点中70点以上。
総得点に加え、項目Ⅰ~Ⅲそれぞれについて6割以上の得点が必要です。
項目Ⅳには減点や優良適合不可となる基準があります。総得点だけで適合を判断しないでください。
配点表の主な評価項目
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Ⅰ 技能及び日本語能力の修得に係る実績:
所定の技能・日本語試験の合格率、再受験の機会、日本語学習への追加支援など。分野別運用方針でより高い日本語水準が定められる場合は、その水準の試験で確認します。
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Ⅱ 体制・待遇・実施状況:
人権方針、外国人が送出機関へ支払う費用をゼロにする措置、キャリア面談、賃金・昇給、住環境、母国語相談体制、優良な監理支援機関の利用、継続困難者の受入れ等。
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Ⅲ 地域社会との共生:
地域との交流、日本文化を学ぶ機会、帰国時の住民税への対応、マイナ保険証の保有率等。
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Ⅳ 法令違反・問題の発生状況:
直近過去3年以内の改善命令の実績、行方不明者の発生状況等。改善命令の実績や実施者に責めのある行方不明者の発生は、優良適合不可となる基準です。技能実習制度時の実績を含める項目もあります。
特定行政書士TIBIの視点
教育や面談の記録は、体制が実際に機能していることを確認する資料になります。ただし、「記録を保管している」こと自体がすべて独立した加点項目になるわけではありません。配点表の各項目と対応させて整理し、外国人の正当な転籍希望を抑えることを優良要件と取り違えないことが大切です。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-117~4-123(配点方式・評価表・日本語水準の取扱い)。
STEP5 無理のない人員計画と経営上の備え
採用計画は、基本枠・優良枠・地方特別枠のどれを適用できるか確認してから立てることが重要です。優良要件への適合が確認される前に、拡大枠を前提として採用や設備投資を確定すると、計画の見直しが必要になる可能性があります。
申請内容の修正や受入れの遅延に備え、採用費、渡航準備費、住居確保費、教育費などの負担者・支払時期・解約条件を確認しましょう。すべての費用が必ず無駄になるとは限りませんが、回収できない費用や人員配置の遅れが資金繰りに影響する可能性があります。
常勤職員の減少・優良要件の不適合が生じた場合
人数枠が減少しても、既に受け入れている育成就労外国人が継続を希望する場合には、保護の観点から人数枠の枠外として扱う取扱いがあります。ただし、こうした外国人を枠外として扱ったまま新たな外国人を受け入れることはできません。既存者の継続と新規受入れを分けて、機構に確認してください。
費用管理・資金繰りに関する説明は経営上の備えとしての提案です。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-113~4-114(人数枠減少時の既存者の取扱い)。
STEP6 金融機関・行政書士・監理支援機関の確認視点
金融機関:事業計画を確認するための視点
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増員・設備投資計画が、実際に適用できる人数枠と受入予定時期に基づいているか。
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優良枠や地方特別枠を織り込む場合、申告書・疎明資料・適合確認の状況を把握しているか。
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受入れの遅延や人数変更に備え、代替の人員計画と必要資金を見込んでいるか。
上記は事業性評価のための提案であり、制度上、金融機関に一律に課される審査項目ではありません。
行政書士・監理支援機関:申請・支援の確認事項
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雇用契約書、就業規則、出勤簿、賃金台帳、雇用保険関係資料などから常勤職員数を確認する。
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監理型・単独型の区分、継続安定体制、優良要件、指定区域、分野別追加基準を確認する。
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育成就労外国人・技能実習生等の算入と除外を整理し、既存者を含む受入人数を確認する。
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優良適合期間と継続確認の期限を管理し、必要な申告書・疎明資料を準備する。
【注意:虚偽の申請・報告をしない】
人数枠に合わせるために職員数や勤務実態を偽ってはいけません。認定基準への不適合や、機構等に対する虚偽の報告・帳簿書類の提出などは、育成就労計画の認定取消しの対象となり得ます。算定誤りが直ちに特定の犯罪に該当すると一律に断定するのではなく、申請前に資料と実態を照合し、誤りがあれば速やかに機構へ相談してください。
根拠:
育成就労制度運用要領(令和8年8月改正版)第4章
、
4-28~4-29、4-107~4-118(算定・手続)、4-263~4-264(法第16条、認定取消し)。
STEP7 実務担当者チェックリスト
受入企業:人数枠と体制の確認
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自社の監理型・単独型の区分と、適用する人数枠を確認したか。
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雇用・勤務条件に基づき、常勤職員数を企業全体で正確に算定したか。
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1号・2号技能実習生の算入、3号技能実習生の別枠、育成就労外国人の除外対象を確認したか。
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分野別告示等の追加基準について、対象者と算定単位を確認したか。
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受入人数に対応した育成・指導・相談体制や住居を確保できるか。
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優良枠等を利用する場合、必要な適合確認と期限管理を行っているか。
金融機関:事業計画の確認に活用する事項
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人員配置計画が、適用可能な人数枠に基づいているか。
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優良要件等への適合が確認できない場合の代替シナリオがあるか。
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採用・住居・教育等の必要資金と支払時期を見込んでいるか。
行政書士・監理支援機関:資料と実態の突合
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常勤職員数と受入人数を、それぞれの算定根拠に従って整理したか。
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基本枠・優良枠・地方特別枠・分野別追加基準の適用条件を確認したか。
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優良要件の評価区分、総得点、項目別得点、適合不可の基準を確認したか。
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必要な申告書・疎明資料・人数枠の枠外の説明書を準備したか。
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継続確認と実施状況報告の期限を受入企業と共有したか。
このチェックリストは、本稿の内容を確認するための整理です。個別案件では、該当する法令・運用要領・分野別告示・様式に従って追加確認してください。
次回は、第9回「送出機関の適正化と送出費用」です。
次回は、送出機関の適正化、送出費用の透明化、受入企業が契約前に確認する事項を整理します。
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