第1回 制度概要と2027年施行へのタイムライン

育成就労制度への移行と、これからの外国人材定着戦略
~受入企業様・金融機関様が押さえるべき実務の論点~

受入企業様・金融機関様が押さえるべき実務の論点と、制度運用のポイント

特設連載 当事務所では、育成就労制度のポイントを分かりやすく解説する特設ページを開設いたしました。複数回に分けてお届けする連載形式となっており、第1回目はまず「これだけは押さえておきたい基本構造と初期の実務リスク」についてお届けします。

いよいよスタートが見えてきた「育成就労制度」。出入国在留管理庁など関係機関が公表している資料や運用要領をもとに、受入企業様や経営を支える金融機関の皆様に向けて、制度の概要や実務上のポイントを分かりやすく整理してご紹介いたします。※令和9年(2027年)4月1日施行予定

1. 本特設ページの目的:制度を正しく知って、これからの経営に活かす

新しい制度のルールをただ覚えるだけでなく、「自社の実務にどう影響するのか」「これからの経営にどう関わってくるのか」をキャッチアップしておくことが大切です。このページでは、次の4つの視点でポイントを整理しています。

  • 全体の流れを掴む: 複雑に見える新制度の基本をすっきり理解する
  • 現場の実務と対策: これから企業や監理支援機関に求められる準備を知る
  • 金融機関としてのチェック点: 取引先企業の事業や資金繰りへの影響を整理する
  • 専門家によるサポート: スムーズな移行と、無理のない運用のためのアプローチ

2. 制度の基本コンセプト:「しっかり育てて、長く活躍してもらう」サイクルへ

育成就労制度のいちばんの目的は、「人材確保・育成・特定技能へのステップアップ」という長期的な視点です。これまでの技能実習のように「期間が来たら帰国する」のではなく、最初から国内での長期雇用やキャリアアップを見据えた仕組みになっています。

運用の注目ポイント

  • 深刻な人手不足に対応するため、はっきりと「人材確保」が目的になりました。
  • 3年間の就労と育成を通じて、現場の即戦力となる「特定技能1号」へのステップアップを目指します。
  • 外国人の権利を守り、キャリアアップを応援する仕組みが最初から組み込まれています。
  • そのため、企業側にも「採用した後の丁寧な育成や、しっかりした管理体制」がこれまで以上に大切になってきます。

3. 実務上の大きな変化:技能実習制度との違いと「転籍制度」

育成就労制度(令和9年(2027年)4月1日施行予定)への移行において、実務上もっとも変わるポイントは、「一定の条件を満たせば、本人の希望による転籍(転職)ができるようになること」です。

項目 従来の「技能実習制度」 これからの「育成就労制度」
主な目的 技能移転による国際貢献 人手不足分野における人材確保・育成
転籍(転職) 原則として不可 一定要件を満たす場合、本人意向による転籍を容認
対象分野 職種・作業ごとの細かな分類 特定技能制度の分野との接続を意識した分類
処遇の姿勢 実態との乖離が課題となるケースも 適正処遇と確実な保護、育成環境の提供が前提

転職が可能になるということは、これからは「スタッフに選ばれる職場づくり」が人手不足を解消する鍵になります。働きやすい環境を整え、スキルアップを応援していくことが、安定した人材確保に繋がっていきます。


4. 長期人材戦略としての5ステップ・ロードマップ

育成就労制度は、目先の3年間だけでなく、将来的な特定技能への移行、さらにその先までずっと繋がっていくストーリーを持っています。

STEP 01:計画認定 ―― まずは「育成就労計画」を作って、きっちり認定をもらう
STEP 02:入国・就労 ―― 手続きを済ませて、いよいよ日本での生活と仕事がスタート
STEP 03:3年間の育成 ―― 計画に合わせて、仕事のスキルや日本語を少しずつレベルアップ
STEP 04:特定技能1号へ移行 ―― 条件をクリアして、より長く、柔軟に働ける資格へバトンタッチ
STEP 05:特定技能2号へ展開 ―― さらにステップアップして、会社の中心メンバーとして定着へ

5. 確実な制度運用を支える関係各機関・専門家の役割

この新しい制度は、色々な機関や外部の専門家がそれぞれの強みを活かし、手を取り合うことでスムーズに回り始めます。

  • 受入企業: 計画に沿って日々の仕事と育成を行う、メインとなる主役です
  • 監理支援機関: サポートや監査、転職の相談などを支えるパートナー(旧・監理団体)
  • 外国人育成就労機構: 計画をチェックしたり、正しい運用が行われているか見守る組織
  • 金融機関(信用金庫など): 経営の相談に乗ったり、必要に応じた資金繰りのアドバイスなどで応援
  • 行政書士(当事務所): 入管法務の専門家として、複雑な申請代行やコンプライアンス体制を構築。新制度で義務化される監理支援機関の「外部監査人」への就任もお任せいただけます。
  • 弁護士・税理士・社会保険労務士・中小企業診断士など: 経営計画の見直し、法的なトラブル予防、人件費の変化に合わせた財務の最適化など、それぞれの専門領域から会社をしっかりバックアップ

当事務所では、こうした各専門家や金融機関の皆様ともネットワークを組んでおり、企業様がトータルで相談できる身近な窓口(ハブ)としても動いています。


6. 【金融機関の皆様へ】取引先企業の「これから」に及ぼす影響とチェック視点

地元の企業を応援する金融機関の皆様にとっても、今回制度への変わり目は大切なチェックポイントです。外国人材が活躍している取引先企業にとっては、この新しい変化への対応が今後の業績を左右する大切な要素になるからです。

金融機関視点での主なチェック項目

  • 制度への対応(人件費や教育費、サポート費用など)が資金繰りに影響していないか
  • 転職ルールが始まることを見据えて、人材が残ってくれそうか、現場の仕事に影響はないか
  • うっかりルール違反などにならないよう、コンプライアンスの相談ができる環境があるか

取引先様がこうした変化に少しずつ準備できているか一緒に確認していくことは、これからの伴走支援やアドバイスにおいて、とても役立つアプローチになります。


7. 受入企業が大切にしたい「5つのルール」と管理のポイント

トラブルなく新制度を進めていくために、受け入れ企業側は次の5つのポイントを継続して守っていく必要があります。

① 立てた計画をしっかり守る / ② 日本人と同じかそれ以上の待遇にする / ③ 日本語やスキルのレベルアップを応援する / ④ 書類や帳簿の管理をきちんとする / ⑤ 給与からの不当な引き去りなどをせず、人権を守る

手続きに不備があったり、書類の内容と実際の現場の様子が違ってしまったりすると、会社にとって思わぬリスクになってしまうことがあります。スタートの段階から、無理のない計画を立てておくことが大切です。


8. 日本語やスキルのレベルアップ:目標に向けた無理のないスケジュール作り

新制度では、3年間のうちに特定技能1号のレベルに届くよう、計画的な育成とテストの受験応援がルールとして決まっています。

  • 日本語の勉強やスキルアップのためのテストなど、スムーズに受けられるようなサポート体制が必要です。
  • ただ日々の仕事をしてもらうだけでなく、「仕事の時間」と「勉強・教育の時間」のバランスをうまくコントロールする優しさが大切になります。
  • スタッフが目標をクリアして成長することは、そのまま会社の評判や、将来的に長く残ってくれる安心感に繋がっていきます。

この連載について

育成就労制度実務ガイドは、全13回の連載として順次公開していく予定です。

今後は、受入企業の5つの責任、対象産業分野、育成就労計画の認定基準、日本語教育と技能評価試験、転籍制度の実務対応、監理支援機関と外部監査制度などを、実務者目線で整理していきます。

今後の掲載予定については、下記の「全13回連載ロードマップ」にまとめています。

育成就労制度に関する実務サポートを承っております

育成就労制度への移行は、単なる手続きだけでなく、これからの会社の経営や採用そのものに関わる大切な節目です。当事務所では、確実な手続きはもちろん、企業様が「ここで働けてよかった」と言ってもらえる職場づくりを目指せるよう、各士業や金融機関の皆様とも連携しながら、実務面から優しくサポートいたします。

今後の特設連載でも詳しい実務のトピックを順番に解説していきますが、「まずは自社の今の状況だとどうなる?」「準備は何から始めればいい?」といった、ちょっとした疑問やご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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