FE-03では「就労できる・できない在留資格」、
FE-04では「在留カードの見方と確認方法」、
FE-05では「外国人採用の基本フロー」を整理しました。
では、企業が必要な確認を行わず、
就労できない外国人を働かせたり、
在留資格で認められていない活動をさせたりした場合、
企業側にはどのような責任が生じるのでしょうか。
FE-06では、外国人本人の「不法就労」だけではなく、
雇用する側に成立し得る「不法就労助長罪」を取り上げます。
さらに、「違反しないために企業は何を確認し、
その確認をどのように社内記録として残すべきか」まで、
実務フローとして整理します。
1.不法就労は「外国人本人だけ」の問題ではない
日本で外国人が働くためには、その活動を行うことのできる在留資格を有していること、
又は必要な資格外活動許可等を受けていることが必要です。
外国人本人が不法に働いた場合だけでなく、
企業や事業主が外国人に不法就労活動をさせた場合には、
雇用する側も不法就労助長罪の対象となる可能性があります。
企業が確認すべきなのは「外国人だから」ということではありません。
確認すべきなのは、
① 日本で適法に在留しているか
② 就労することができるか
③ 予定する仕事内容を行うことができるか
④ 就労時間・活動内容等に制限がないか
という「在留資格と実際の仕事との適合性」です。
2.不法就労となる代表的な3つのケース
出入国在留管理庁は、不法就労となるケースを大きく3つに整理して注意喚起しています。
① 不法滞在者等が働く
在留期限を過ぎている人など、適法な在留資格を有していない外国人が働くケース。
② 働く許可を受けずに働く
就労できる在留資格を有していない外国人が、必要な許可を受けずに働くケース。
③ 認められた範囲を超えて働く
在留資格や資格外活動許可等によって認められた活動範囲・時間を超えて働くケース。
例:
・「留学」「家族滞在」の外国人が必要な資格外活動許可を受けずに働く
・外国料理の調理師として認められている外国人が工場作業に従事する
・資格外活動許可を受けた留学生が、許可された時間を超えて働く
3.不法就労助長罪とは
入管法第73条の2は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせる行為などを
処罰の対象としています。
① 不法就労活動をさせる
事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせる行為。
② 不法就労させるため支配下に置く
外国人に不法就労活動をさせるため、その外国人を自己の支配下に置く行為。
③ 業としてあっせんする
不法就労活動をさせる行為等を、業としてあっせんする行為。
重要:
「不法就労した外国人だけが処罰される」という制度ではありません。
不法就労をさせた事業主側にも刑事責任が生じ得ます。
4.罰則と2027年4月1日からの改正
【現在】2026年8月24日時点
不法就労助長罪について、
3年以下の拘禁刑
又は
300万円以下の罰金
の対象となります。
【2027年4月1日から】
改正法の施行により、
5年以下の拘禁刑
又は
500万円以下の罰金
へ引き上げられます。
時点に注意してください。
2026年8月24日現在、すでに「5年以下・500万円以下」になっているわけではありません。
改正法の原則施行日は2027年4月1日です。
5.「不法就労だとは知らなかった」なら大丈夫なのか
企業実務で特に重要なのが、この点です。
「不法就労者だとは知らなかった」と説明するだけで、
当然に処罰を免れるわけではありません。
出入国在留管理庁は、外国人を雇用する際、
その外国人が不法就労者であることを知らなかった場合であっても、
在留資格の有無を確認していない等の過失がある場合には、
処罰を免れないと説明しています。
したがって企業には、
「知らなかった」で終わらせないための
採用時確認の仕組みが必要です。
【実務上重要】確認した事実を記録に残す
在留カード等を確認するだけでなく、
「いつ・誰が・何を・どの方法で確認したか」を
社内記録として残しておくことが、実務上重要です。
例えば、次の事項を記録します。
- 在留カード等を確認した日
- 確認担当者
- 在留資格
- 在留期間の満了日
- 就労制限の有無
- 資格外活動許可の有無・内容
- 必要に応じて確認した指定書等の内容
- 在留カード等読取アプリケーションによる確認の有無・実施日
- 在留カード等番号失効情報照会の実施日
- 予定する仕事内容と在留資格との適合性を確認した結果
こうした記録は、
企業がどのような確認を行ったのかを後から確認できる重要な実務記録
となります。
ただし、ここは誤解しないでください。
在留カードのコピーやチェック表を保存しているだけで、
不法就労助長罪について当然に免責されるわけではありません。
重要なのは、
実際に必要な確認を行い、その確認内容を正確に記録すること
です。
6.在留カードは「持っている」だけでは判断できない
在留カードを所持していることだけをもって、
「この外国人は自由に働ける」と判断してはいけません。
採用時には、少なくとも次の事項を確認します。
STEP 1
本人・カードを確認
STEP 2
在留資格・満了日
STEP 3
就労制限・資格外活動
STEP 4
真正性・失効確認
STEP 5
仕事内容との適合性
「在留資格名」だけでも判断できません。
就労可能な在留資格を持っていても、
実際に担当させる仕事内容が、その在留資格で認められる活動に該当するかを
別途確認する必要があります。
7.資格外活動許可・指定書も確認する
「留学」「家族滞在」など
在留カード表面に「就労不可」と記載されていても、
裏面の資格外活動許可欄に許可の記載がある場合には、
その許可された範囲内で就労できることがあります。
ただし、活動内容・就労時間等に制限があります。
「特定活動」
「特定活動」は、同じ在留資格名であっても、
外国人ごとに認められている活動内容が異なる場合があります。
在留カードに
「指定書により指定された就労活動のみ可」
などの記載がある場合には、
指定書の内容まで確認する必要があります。
8.偽変造カード対策|読取アプリ・失効情報照会も活用
券面だけを目視して確認する方法には限界があります。
出入国在留管理庁では、
在留カード等のICチップ情報を読み取る
「在留カード等読取アプリケーション」を提供しています。
また、在留カード等番号失効情報照会を利用して、
カード番号が失効していないか確認することもできます。
推奨する考え方
券面確認
+
読取アプリによるICチップ確認
+
失効情報照会
を必要に応じて組み合わせ、
確認精度を高めます。
注意:
失効情報照会だけでは、カードそのものの偽変造や
券面情報との相違まで確認できるものではありません。
一つの確認方法だけに依存しないことが重要です。
9.契約書だけでなく「実際の仕事」を確認する
雇用契約書や労働条件通知書に記載された職務内容が適切でも、
実際の現場で別の仕事をさせていれば問題となり得ます。
例えば、
・採用時とは異なる仕事を日常的に担当させる
・店舗異動によって業務内容が変わる
・派遣先で予定していなかった作業に従事する
・配置転換によって在留資格との適合性が変わる
といったケースには注意が必要です。
「契約上の仕事」と「実際に行っている仕事」の両方を確認する
ことが重要です。
10.企業が作るべき「不法就労防止チェックリスト」
□ 仕事内容の明確化
採用予定者に担当させる業務を具体的に整理する。
□ 本人・在留カード等の確認
本人と提示された在留カード等を確認する。
□ 在留資格・満了日の確認
在留資格と在留期間の満了日を確認する。
□ 就労制限の確認
在留カード表面の「就労制限の有無」を確認する。
□ 資格外活動許可の確認
必要な場合は裏面の資格外活動許可欄を確認する。
□ 指定書等の確認
「特定活動」等では必要に応じて指定書等を確認する。
□ 真正性・失効確認
読取アプリ・失効情報照会等を必要に応じて活用する。
□ 仕事内容との照合
予定する仕事内容が在留資格上認められるか確認する。
□ 入社時の再確認
採用選考時だけでなく、実際の入社時点でも状況を確認する。
□ 確認記録の保存
確認日、担当者、確認方法、確認結果等を社内記録として残す。
□ 在留期限の継続管理
在留期間の満了日・更新状況等を管理する。
□ 配置転換時の再確認
店舗異動・職務変更・派遣先変更等の際には、再度適合性を確認する。
採用時の「一回だけの確認」で終わらせないことがポイントです。
外国人雇用は、
採用前 → 入社時 → 在留期間更新 → 配置変更 → 退職
まで継続して管理する企業実務です。
11.在留カードのコピーを保管する場合の注意
外国人雇用状況の届出では、
在留カード等を確認して必要事項を届け出ますが、
在留カード等の写しをハローワークへ添付する必要はありません。
一方、企業が自社の確認記録として在留カードの写し等を保管する場合には、
個人情報を取り扱うことになります。
社内で決めておきたい事項
・何の目的で保管するのか
・誰が閲覧できるのか
・どこに保管するのか
・いつまで保管するのか
・不要となった情報をどのように廃棄するのか
「念のためコピーを取っておく」というだけではなく、
確認目的と個人情報管理をセットで設計することが重要です。
12.担当者任せにしない|企業として確認手順を標準化する
外国人雇用を、
店長・現場責任者・採用担当者一人の判断に任せてしまうことは危険です。
企業として、
① 確認項目を決める
② 確認担当者を決める
③ 判断に迷った場合の相談ルートを決める
④ 確認結果を記録する
⑤ 在留期限等を継続管理する
という社内フローを作ることが、
不法就労防止の基本となります。
13.不法就労助長は「刑事責任」だけの問題ではない
| リスク |
企業・事業主への影響 |
| 刑事責任 |
不法就労助長罪として刑事罰の対象となる可能性があります。
|
| 法人への影響 |
行為者だけでなく、法令上の両罰規定が問題となる場合があります。
|
| 外国人事業主 |
外国人事業主自身による不法就労助長行為は、
退去強制事由との関係も問題となります。
|
| 在留審査 |
入管法違反による処罰歴等が、その後の在留審査に影響する場合があります。
|
| 他の許認可等 |
業種・制度によっては、不法就労助長行為や刑事処分等が
許認可・外国人受入要件等に影響する場合があります。
個別制度ごとの確認が必要です。
|
| 企業信用 |
取引先、金融機関、採用活動等への信用リスクにつながる可能性があります。
|
14.FE-06のまとめ|「確認+記録+継続管理」で防ぐ
不法就労防止の目的は、外国人を疑うことではありません。
企業として、
適法に働くことのできる人を、認められた範囲で適正に雇用する仕組み
を作ることです。
仕事内容を決める
↓
在留資格・就労可否を確認する
↓
在留カード・資格外活動許可・指定書等を確認する
↓
必要に応じて真正性・失効情報を確認する
↓
実際の仕事内容との適合性を確認する
↓
確認内容を記録する
↓
入社後も更新・配置変更等を継続管理する
この一連の流れを社内の標準手順にすることが、
不法就労を防止し、外国人本人と企業の双方を守るための基本です。
15.主な法的根拠・公的確認先
基準日:2026年8月24日
本ページは、出入国管理及び難民認定法、
出入国在留管理庁・厚生労働省等の公表資料を基に、
企業の外国人雇用実務の観点から整理したものです。
個別案件については、本人の在留資格、許可内容、指定書、
実際の業務内容、雇用形態等を個別に確認する必要があります。