【第3回】審査請求ができる案件・できない案件

【第3回】特定行政書士が解説

審査請求ができる案件・
できない案件

特定行政書士が代理できる範囲とは

行政機関の判断や対応に納得できない場合、 すべてについて審査請求ができるのでしょうか。

答えは、必ずしもそうではありません。

行政不服審査法上の「処分」に当たるのか。
法令に基づく申請に対する「不作為」なのか。
法律上の適用除外や個別法の特則はないか。
特定行政書士が代理できる許認可等に関するものか。

審査請求を検討する際には、 まず対象となる行政活動の法的な性質と、 利用できる救済手続を整理する必要があります。

第3回では、審査請求の対象となる案件・ならない案件と、 特定行政書士が代理できる範囲を解説します。

行政機関の対応なら何でも審査請求できるわけではない

行政不服審査法は、行政庁の「処分」や、 法令に基づく申請に対する「不作為」について、 審査請求を行うための一般的な制度を定めています。

しかし、行政機関が行う活動には、 処分、行政指導、情報提供、照会、事実上の要請、 内部的な判断など、さまざまなものがあります。

行政機関から何らかの連絡や回答を受けたというだけで、 直ちに審査請求の対象となるわけではありません。

審査請求の対象となり得るもの

  • 許認可申請に対する不許可処分
  • 営業停止処分
  • 許可・免許・登録などの取消処分
  • 行政庁による一定の公権力の行使
  • 法令に基づく申請に対し、相当期間内に処分がされない不作為

原則として直ちに対象とはならないもの

  • 単なる相談への回答や情報提供
  • 法的効果を伴わない一般的な助言
  • 任意の協力を求める行政指導
  • 行政機関内部の検討・連絡
  • まだ最終的な処分がされていない段階の見解
名称だけで判断しないことが重要です。

「通知」「回答」「勧告」「要請」などと記載されていても、 その名称だけで審査請求の可否が決まるわけではありません。

実際に、相手方の権利義務や法的地位へ どのような影響を与える行政活動なのかを、 根拠法令と具体的内容から確認する必要があります。

「処分」についての審査請求

行政不服審査法第2条は、 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為について 不服がある者が、審査請求をすることができる旨を定めています。

許認可申請に対する不許可、営業停止、 許可取消しなどは、典型的に問題となる行政処分です。

もっとも、審査請求の対象となるかどうかは、 行政機関の文書に「処分」と書かれているかだけで判断するものではありません。

一般的には、行政庁が法令に基づき、 一方的に相手方の権利義務や法的地位へ 直接影響を与えるものであるかが重要になります。

具体例:許認可申請に対する不許可

法律や条例に基づき提出した許認可申請について、 行政庁が要件を満たさないとして不許可処分をした場合には、 原則として審査請求の対象となり得ます。

ただし、個別法に特別な不服申立制度や 審査請求先に関する規定が設けられている場合があります。

「不作為」についての審査請求

行政不服審査法第3条は、 法令に基づく申請をしたにもかかわらず、 行政庁が相当の期間内に何らかの処分をしない場合について、 不作為に対する審査請求を認めています。

例えば、法律や条例に基づいて許可申請を行い、 申請が行政庁へ到達しているにもかかわらず、 相当の期間が経過しても許可・不許可のいずれの判断もされない場合です。

「返事が遅い」だけで、直ちに不作為となるわけではありません。

対象となるのは、法令に基づく申請に対して、 行政庁が何らかの処分をすべき義務を負っている場合です。

また、「相当の期間」が経過したかどうかは、 処分の性質、審査内容、標準処理期間、 補正や追加資料提出の経緯などを踏まえて検討されます。

処分に対する審査請求との違い

不許可処分が既に行われている場合は、 その不許可処分に対する審査請求が問題となります。

一方、許可・不許可のいずれの判断もされていない場合には、 不作為に対する審査請求として検討することになります。

審査請求の対象になるかを確認する5つの手順

1

行政機関から何を受けたのか

通知書、命令書、許可取消書、回答書など、 文書の名称と内容を確認します。

2

根拠法令は何か

どの法律、政令、省令、条例、規則などに基づく 行政活動なのかを確認します。

3

法的効果が生じているか

許可を得られなくなった、営業できなくなったなど、 権利義務や法的地位へ直接影響しているかを確認します。

4

適用除外や個別法の特則はないか

行政不服審査法第7条の適用除外や、 個別法に定められた特別な手続を確認します。

5

申立先・期間・代理権を確認する

審査請求先、請求期間、 特定行政書士が代理できる範囲であるかを確認します。

法律上、審査請求ができない場合もある

行政不服審査法は、行政処分に対する 一般的な不服申立制度を定める法律です。

ただし、同法第7条は、 一定の処分や不作為について 行政不服審査法を適用しないことを定めています。

また、第7条の適用除外とは別に、 個別の法律に特別な不服申立制度や 通常とは異なる手続が定められていることがあります。

行政不服審査法だけを確認すればよいとは限りません。

対象となる許認可や処分について定める個別法、 関係政省令、条例なども確認し、 不服申立ての可否、申立先、期間、 特別な前置手続の有無を整理する必要があります。
特定行政書士が代理できる範囲

審査請求ができる案件であっても、 その案件を必ず特定行政書士が代理できるとは限りません。

特定行政書士が代理できるのは、 行政書士法で認められた範囲の 行政庁に対する不服申立手続です。

現行の行政書士法第1条の4第1項第2号は、 行政書士が作成することのできる官公署提出書類に係る 許認可等に関する審査請求、再調査の請求、 再審査請求その他の不服申立手続の代理等を定めています。

2026年1月1日施行の重要な改正

改正前

行政書士が実際に 「作成した」 官公署提出書類に係る許認可等

改正後

行政書士が 「作成することができる」 官公署提出書類に係る許認可等

これにより、特定行政書士が当初の申請書を 自ら作成していない場合であっても、 その書類が行政書士の作成可能な官公署提出書類に該当する限り、 不服申立てを取り扱える可能性があります。

行政庁に対するあらゆる不服申立てを 代理できるわけではありません。

対象となる処分が、 行政書士が作成することのできる 官公署提出書類に係る許認可等に関するものかを、 個別に確認する必要があります。

特定行政書士と弁護士の役割の違い

特定行政書士

行政書士法で認められた範囲において、 行政庁に対する審査請求、再調査の請求、 再審査請求その他の不服申立手続を代理します。

また、その手続について 官公署へ提出する書類を作成します。

弁護士

行政訴訟における訴訟代理、 訴訟上の法律事務、 民事上の紛争に関する代理交渉などを取り扱います。

取消訴訟など裁判所での手続が必要な場合には、 弁護士への相談や連携を検討する必要があります。

行政不服申立てと行政訴訟は異なる制度であり、 特定行政書士の代理権と弁護士の職務範囲も異なります。

相談を受ける専門家がどの資格を持ち、 どの手続まで代理できるのかを確認することが重要です。

相談前に準備しておきたい資料

審査請求の可否や特定行政書士の代理範囲を判断するためには、 行政機関から受け取った文書だけでなく、 申請から処分までの経緯を確認する必要があります。

  • 不許可通知書、取消通知書、命令書など
  • 申請書および添付資料の控え
  • 根拠法令や審査基準が分かる資料
  • 補正依頼・追加資料提出の履歴
  • 行政庁とのメールや書面
  • 電話・面談内容の記録
  • 処分を知った日が分かる資料
  • 行政庁から示された不服申立ての教示

これらを時系列に整理することで、 審査請求の対象となる処分か、 期間内であるか、 どの専門家が対応できるかを判断しやすくなります。

特定行政書士の視点

最初に確認するのは、処分の「名前」ではなく「法的な性質」です

行政機関から不利益な文書を受け取ると、 「この内容には納得できないので、すぐ審査請求をしたい」 と考えることがあります。

しかし、実務上は、まずその文書や行政対応が 行政不服審査法上の処分に該当するのかを確認します。

通知書という名称であっても法的効果を伴う場合がある一方、 命令や勧告のように見える表現であっても、 直ちに審査請求の対象となるとは限りません。

次に、適用除外や個別法の特則、 審査請求先、期間を確認します。

さらに、特定行政書士が代理できる案件か、 行政訴訟や民事上の紛争への対応が必要となるため 弁護士との連携を検討すべき案件かを整理します。

「不満があるか」ではなく、 「どの法的手続を利用できるのか」を最初に見極めること。

これが、行政処分に対する権利救済の出発点です。

次回予告

第4回
審査請求には期限がある

審査請求には、法律で定められた期間制限があります。

「処分があったことを知った日の翌日から3か月」 という期間をどのように計算するのか。

処分の日から1年という制限や、 正当な理由がある場合の例外、 審査請求書の提出から裁決までの流れを解説します。

法的根拠(第3回の主な条文)

行政不服審査法第2条
処分についての審査請求
行政不服審査法第3条
不作為についての審査請求
行政不服審査法第7条
行政不服審査法の適用除外
行政書士法第1条の4第1項第2号・同条第2項
特定行政書士による行政庁に対する 不服申立手続の代理および関係書類の作成
弁護士法第72条
弁護士または弁護士法人でない者による 法律事務の取扱いに関する制限