【第5回】特定行政書士が解説
説得力のある審査請求書とは00 \ 0xl+
主張・事実・証拠をどう組み立てるか
審査請求書は、 「行政庁の処分に納得できない」 という気持ちを書くだけの文書ではありません。
審査請求の対象となった処分について、 どの法令・審査基準が問題となり、 どの事実について行政庁の判断に問題があり、 それをどの証拠が裏付けるのか を整理する必要があります。
何が争点なのか。
どの事実を問題とするのか。
その事実を何が裏付けるのか。
そこから、なぜ処分が違法または不当といえるのか。
第5回では、 行政不服審査法第19条の審査請求書の記載事項を出発点として、 主張・事実・証拠を論理的につなげる考え方と、 証拠資料の活用方法を解説します。
審査請求書は「不満を書く書類」ではない
審査請求では、 処分について不満があるというだけで 当然に処分が見直されるわけではありません。
まず、 審査請求によって何を求めるのかを明らかにし、 そのうえで、 処分が違法または不当であると考える理由を 具体的に整理します。
伝わりにくい主張
「この不許可には納得できません。 これまで十分に説明してきたので、 処分を取り消してください。」
これだけでは、 どの法的判断や事実認定を争っているのかが 明確ではありません。
整理された主張のイメージ
「処分庁は○○要件を満たしていないと判断したが、 提出済みの資料A・資料Bからは○○という事実が確認できる。 したがって、この事実認定を前提とする不許可処分には 再検討すべき点がある。」
問題となる要件・事実・資料が結び付いています。
まず行政不服審査法第19条を押さえる
処分についての審査請求書には、 行政不服審査法第19条に基づき、 法定の記載事項があります。
主な記載事項
- 審査請求人の氏名または名称、住所または居所
- 審査請求に係る処分の内容
- 処分があったことを知った年月日
- 審査請求の趣旨および理由
- 処分庁の教示の有無およびその内容
- 審査請求の年月日
代理人によって審査請求をする場合や、 法人その他の一定の場合には、 追加して記載すべき事項があります。
書式上必要な項目を埋めるだけではなく、 「審査請求の趣旨」と「理由」の中で 争点を分かりやすく整理することが重要です。
「審査請求の趣旨」と「理由」を分けて考える
審査請求の趣旨
「趣旨」は、 審査請求によって審査庁に どのような裁決を求めるのかを示す部分です。
例えば、不許可処分について その取消しを求めるのであれば、 対象となる処分を特定したうえで、 何を求めるのかを明確にします。
審査請求の理由
「理由」では、 なぜその処分を取り消すべきなのか、 またはなぜ違法・不当と考えるのかを整理します。
ここで重要になるのが、 法令、審査基準、事実、証拠を結び付けること です。
主張は「法令 → 事実 → 証拠 → 評価」で組み立てる
審査請求の理由を整理するときには、 次のような順序で考えると、 争点が見えやすくなります。
どの法律・条例・規則等の どの要件が問題となっているのか。
公表された審査基準などがある場合、 どの基準が適用されたのか。
行政庁はどの事実を認定し、 審査請求人側はどの事実が正しいと考えるのか。
その事実を、契約書、証明書、 写真、図面、記録その他の資料の 何によって確認できるのか。
以上を踏まえ、 なぜ処分庁の事実認定・法令適用・判断に 問題があると考えるのか。
その結果として、 どのような裁決を求めるのか。
具体例で見る「主張・事実・証拠」のつなぎ方
「申請者は、必要な要件Aを満たしていることを 確認できないため、不許可とする。」
申請時に提出した資料には、 要件Aに関係する事実Xが記載されており、 さらに補正時に資料Bも提出していた。
証拠資料A:申請時の提出書類
証拠資料B:補正時に提出した資料
証拠資料C:行政庁からの補正依頼メール
これらの資料から事実Xを確認できるにもかかわらず、 処分庁が「確認できない」と判断したのであれば、 どの資料をどのように評価したのかを検証する必要がある。
根拠法令および審査基準と照らし、 事実Xが要件Aにどのように関係するのかを示し、 処分庁の事実認定または要件への当てはめに 問題がないかを検討する。
このように、 「私は要件を満たしています」 と結論だけを主張するのではなく、
どの要件について、 どの事実があり、 それを何の資料が裏付け、 その結果なぜ行政庁の判断に問題があるのか
を一つずつつなげていくことが大切です。
証拠書類等は審査請求書とは別に提出できる
行政不服審査法第32条は、 審査請求人または参加人が、 証拠書類または証拠物 を提出することができると定めています。
審査請求書の文章だけで説明するのではなく、 主張する事実を裏付ける資料を 適切に提出することが重要です。
重要なのは、 それぞれの証拠が 「どの事実を証明・裏付けるための資料なのか」 が分かるように整理することです。
証拠は「何を示す資料か」を明確にする
大量の資料を提出しても、 どの資料がどの主張に対応しているのか分からなければ、 争点がかえって見えにくくなります。
証拠整理のイメージ
資料1 申請書控え
→ 申請時に事実Xを申告していたことを示す
資料2 添付証明書
→ 事実Xの客観的な存在を裏付ける
資料3 補正依頼メール
→ 行政庁がどの点を問題としていたかを示す
資料4 補正提出書
→ 指摘事項に対して追加説明・資料提出を行ったことを示す
このように、 「資料番号 → 資料名 → 何を裏付けるのか」 を対応させると、 主張との関係が分かりやすくなります。
自分の手元にない資料についてはどうするか
行政不服審査法第33条には、 「物件の提出要求」 という制度があります。
第32条
審査請求人・参加人などが、
証拠書類等を提出するための規定です。
第33条
審理員が、
審査請求人または参加人の申立てにより、
または職権で、
書類その他の物件の所持人に対して
提出を求めるための規定です。
したがって、 第33条は単に 「審査請求人が自分の証拠を提出するための条文」 ではありません。
必要な書類等が第三者その他の所持人のもとにあり、 その提出が審理上問題となる場合に利用を検討する制度です。
提出された資料を確認する制度もある
審査請求では、 処分庁側から提出された資料などを確認することも 重要になる場合があります。
行政不服審査法第38条は、 審査請求人または参加人が、 法律上対象となる提出書類等について、 閲覧または写し等の交付を求める制度 を定めています。
それを確認することによって、 自分の主張と処分庁側の認識の違いが 明確になることがあります。
ただし、 閲覧・交付の対象や手続には 法律上の要件があります。 すべての資料を無条件で閲覧できるという意味ではありません。
最後に「争点」を絞り込む
審査請求書を書く前に、 何が本当に問題なのかを整理します。
- 行政庁が適用した根拠法令は正しいか
- 問題とされた許認可要件は何か
- 行政庁が認定した事実は何か
- その事実認定に誤りや見落としはないか
- 審査基準の適用に問題はないか
- 自分が主張する事実を裏付ける証拠は何か
- 処分庁側の資料と自分の資料に食い違いはないか
- 最終的に審査庁へ何を求めるのか
論点を増やせば強くなるわけではありません。
処分の結論に影響した重要な争点を見極め、 その争点ごとに事実と証拠を対応させること が重要です。
審査請求書を作成するとき
「言いたいこと」ではなく
「争点」を先に整理します
不許可処分を受けた直後には、 行政庁に伝えたいことが数多く出てくると思います。
しかし、それをすべて審査請求書へ書けば、 説得力が増すとは限りません。
私なら最初に、
- 処分の根拠法令
- 問題となった許認可要件
- 行政庁が認定した事実
- その事実認定に対する反論
- 反論を裏付ける証拠
- 審査基準との関係
- 最終的に求める裁決
を一つの流れとして整理します。
例えば、
「資料Aがあります」
だけではなく、
「資料Aによって事実Xが確認でき、 その事実Xは要件Yの判断に関係するため、 処分庁の事実認定・当てはめを再検討すべきである」
というように、 資料と主張をつなげます。
主張・事実・証拠をバラバラにしない。
これが、 読む側に伝わる審査請求書を作るうえで 大切な考え方です。
第6回
行政庁の弁明にどう対応する?
審査請求が行われると、 処分庁等から弁明書が提出されます。
次回は、 弁明書のどこを確認するのか、 反論書をどのように組み立てるのか、 さらに口頭意見陳述をどのように活用するのかを 解説します。
法的根拠(第5回の主な条文)
- 行政不服審査法第19条
- 審査請求書の提出および記載事項
- 行政不服審査法第32条
- 証拠書類等の提出
- 行政不服審査法第33条
- 物件の提出要求
- 行政不服審査法第38条
- 審査請求人等による提出書類等の閲覧等