【第4回】 審査請求には期限がある

【第4回】特定行政書士が解説

審査請求には期限がある

「3か月」のルールと手続全体の流れ

不許可通知書を受け取り、 「行政庁の判断を見直してもらいたい」 と考えたとしても、 審査請求はいつでもできるわけではありません。

行政不服審査法には、 審査請求をすることができる期間が定められています。

不許可通知書のどこを最初に見るのか。
「3か月」はいつから数えるのか。
処分の日から1年という期限は何を意味するのか。
審査請求書を提出した後は、どのように手続が進むのか。

第4回では、 不許可通知書の「教示」の確認から、 審査請求期間、具体的な期間計算、 審査請求書の提出、 裁決までの基本的な流れを整理します。

まず不許可通知書の「教示」を確認する

不許可通知書を受け取ったら、 最初に確認していただきたいのが、 通知書の末尾などに記載されている 「教示」です。

行政不服審査法第82条は、 不服申立てをすることができる処分を書面でする場合、 行政庁は原則として、 処分の相手方に対し、 次の事項を書面で教示しなければならないと定めています。

  • 不服申立てをすることができる旨
  • 不服申立てをすべき行政庁
  • 不服申立てをすることができる期間
教示欄のイメージ
この処分に不服がある場合は、 この処分があったことを知った日の翌日から起算して 3か月以内に、○○行政庁に対して 審査請求をすることができます。

ただし、原則として、 処分があった日の翌日から起算して 1年を経過した場合には、 審査請求をすることができません。

実務では、 「○月○日まで」と具体的な期限日ではなく、 「知った日の翌日から3か月以内」 のように期間のルールとして 記載されていることがあります。

教示がある場合でも、具体的な期限日まで 記載されているとは限りません。

教示内容を確認したうえで、 実際に処分を知った日、 処分の日、 個別法の特則などと照合して 期限を整理することが重要です。

原則は「知った日の翌日から3か月」

行政不服審査法第18条第1項では、 処分についての審査請求は、 原則として 処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月 を経過するとすることができないと定められています。

処分を知った日から

3か月

「知った日」そのものではなく、 その翌日から 起算します。

処分の日から

1年

処分があった日の 翌日から 起算します。

「3か月」だけでなく「1年」も確認する

行政不服審査法第18条第2項では、 原則として、 処分があった日の翌日から起算して1年 を経過した場合にも、 審査請求をすることができないと定められています。

そのため、 「処分を知ったのが最近だから、 そこから必ず3か月ある」 と単純に考えることはできません。

期限の確認では、 「処分を知った日」と「処分の日」の 両方を見る必要があります。

「3か月」は単純な「90日」ではない

行政不服審査法は、 「90日」ではなく 「3か月」 と定めています。

月によって定められた期間は、 原則として暦に従って計算します。

具体例:2026年4月15日に不許可処分を知った場合

例えば、事業者が 2026年4月15日に不許可処分があったことを知った とします。

4月15日 処分を知った日
4月16日 起算開始
7月15日 3か月の期間満了
ここがポイントです。

「4月15日から90日を数える」 という考え方ではありません。

処分を知った日の翌日から起算し、 月単位の期間として暦に従って計算します。
この例は、期間計算の仕組みを理解するための一般例です。

実際の期限については、 処分を知った日の認定、 処分の日、 個別法の特則、 期間満了日の扱いその他の事情を含めて 個別に確認する必要があります。

「正当な理由」がある場合には例外もある

行政不服審査法第18条第1項・第2項では、 それぞれ、 「正当な理由があるとき」 には期間制限について例外となり得ることが 定められています。

ただし、 期限を過ぎても当然に審査請求が認められる という意味ではありません。

正当な理由が認められるかどうかは、 個別の事情に応じて判断されます。

例外を前提にせず、 原則的な期間内に手続を行うことが基本です。

教示がない場合はどうするのか

不服申立てをすることができる処分について、 行政庁が行政不服審査法第82条による 教示をしなかった場合については、 同法第83条に特別な規定があります。

この場合には、 処分に不服がある者は、 処分庁に不服申立書を提出することができる とされています。

本来、処分庁以外の行政庁に対して 審査請求をすべき場合には、 処分庁から適切な行政庁へ送付される仕組みが 定められています。

教示が見当たらないからといって、 そのまま放置することは避けてください。

まず、その処分が不服申立て可能な処分なのか、 申立先や期限がどうなっているのかを 確認することが重要です。

審査請求は原則として審査請求書で行う

行政不服審査法第19条では、 他の法律や条例に 口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、 審査請求は審査請求書を提出して行うこととされています。

処分についての審査請求書に記載する主な事項

  • 審査請求人の氏名または名称、住所または居所
  • 審査請求の対象となる処分の内容
  • 処分があったことを知った年月日
  • 審査請求の趣旨および理由
  • 処分庁の教示の有無およびその内容
  • 審査請求の年月日

審査請求期間を経過している場合には、 正当な理由についての記載も問題となります。

郵送する場合にも期間計算のルールがある

行政不服審査法第18条第3項では、 審査請求書を郵便または一定の信書便により提出した場合、 審査請求期間の計算について、 送付に要した日数を算入しない 旨が定められています。

もっとも、 期限ぎりぎりの提出は、 書類不備や送付方法の確認など 別のリスクを生じさせます。

実務では、期限に余裕をもって 準備・提出することが重要です。

審査請求書を提出した後の基本的な流れ

審査請求書を提出した後は、 一般的には次のような流れで審理が進みます。

1

審査請求書の提出

審査庁へ審査請求書を提出します。

2

審理員の指名

審理員を指名する事件では、 原則として処分に関与していない職員等が 審理手続を担当します。

3

処分庁等から弁明書

審理員は、 処分庁等に弁明書の提出を求めます。

4

審査請求人から反論書

審査請求人は、 弁明書の内容に対して 反論書を提出することができます。

5

審理員意見書

審理手続が終結すると、 審理員は審査庁に 審理員意見書を提出します。

6

行政不服審査会等への諮問

法律上、諮問が必要な事件では、 行政不服審査会その他の第三者機関へ 諮問されます。

7

裁決

必要な手続を経た後、 審査庁が裁決を行います。

すべての事件が、 必ずこの流れになるわけではありません。

審理員を指名しない場合、 行政不服審査会等への諮問を要しない場合、 個別法に特別な手続が設けられている場合などがあります。

不許可通知書が届いたら保存しておきたい資料

  • 不許可通知書の原本
  • 通知書の「教示」部分
  • 通知書が入っていた封筒
  • 受領日が分かる資料・記録
  • 申請書と添付資料の控え
  • 補正依頼・追加資料提出の記録
  • 行政庁とのメール
  • 電話・面談内容の記録

特に、 「いつ処分があったことを知ったのか」 を確認できる資料は、 審査請求期間を検討するうえで重要になります。

特定行政書士やすもとの視点

不許可通知書が届いたら

「理由」と同時に
「教示・期限」を確認します

第2回では、 不許可通知書に記載された 「理由」を読み解く重要性を解説しました。

しかし、 審査請求を検討する場合には、 理由の分析だけに時間を使うわけにはいきません。

私なら通知書を受け取った段階で、 理由と同時に次の項目を確認します。

  • 処分の日
  • 処分があったことを知った日
  • 教示の有無とその内容
  • 審査請求先
  • 3か月の期間
  • 処分の日から1年の期間
  • 個別法に特則がないか

法令、審査基準、事実認定、 証拠資料を検討している間にも、 審査請求期間は進んでいきます。

「内容の分析」と「期限管理」を同時に始める。

これが、 行政不服申立てを検討する際の 重要な初動の一つです。

次回予告

第5回
説得力のある審査請求書とは

審査請求は、 単に「処分に納得できない」と伝える手続ではありません。

次回は、 処分の根拠法令、審査基準、 行政庁の事実認定、証拠資料を整理し、 主張・事実・証拠を どのようにつなげるのかを解説します。

法的根拠(第4回の主な条文)

行政不服審査法第9条
審理員
行政不服審査法第18条
審査請求期間
行政不服審査法第19条
審査請求書の提出・記載事項
行政不服審査法第29条
弁明書の提出
行政不服審査法第30条
反論書等の提出
行政不服審査法第42条
審理員意見書
行政不服審査法第43条
行政不服審査会等への諮問
行政不服審査法第44条
裁決の時期
行政不服審査法第82条
不服申立てをすべき行政庁等の教示
行政不服審査法第83条
教示をしなかった場合の不服申立て
民法第140条・第143条
期間の初日不算入・暦による期間計算