【第2回】特定行政書士が解説
「不許可通知書」が届いたら
最初に確認すべきこと
理由の提示を読み解く実務
許認可申請の結果として届いた「不許可通知書」。
多くの方は、まず 「不許可になった」という結論 に目を向けます。
しかし、再申請や審査請求を検討するうえで、 本当に重要なのは、 「なぜ不許可となったのか」 という理由です。
どの許可要件を満たしていないのか。
どの事実が問題とされたのか。
その理由は、申請者が理解できる程度に示されているのか。
第2回では、行政手続法第5条および第8条を踏まえ、 不許可通知書を確認する際の実務上のポイントを解説します。
不許可通知書は単なる結果通知ではない
行政手続法第8条は、行政庁が申請により求められた 許認可等を拒否する処分をする場合、 原則として申請者に対し、その理由を示さなければならないと定めています。
理由提示が必要とされるのは、申請者に 「不許可になりました」と結論だけを伝えるためではありません。
行政庁がどのような法令や審査基準を適用し、 どのような事実を認定したうえで不許可と判断したのかを明らかにし、 申請者がその判断の妥当性を検討できるようにするためです。
したがって、不許可通知書は、 再申請や審査請求など次の対応を検討するための 重要な出発点となります。
最初に確認したい5つのポイント
① 根拠となる法令は何か
まず、どの法律、政令、省令、条例、規則などを根拠として 不許可となったのかを確認します。
条文が記載されている場合には、 その条文が本当に当該申請へ適用されるのか、 行政庁の解釈が適切かも確認する必要があります。
② どの許可要件を満たしていないのか
「許可要件を満たしていない」という記載だけでは、 何が問題なのか十分に分かりません。
人的要件、設備・施設要件、財産的基礎、 欠格事由その他のどの要件が問題となったのかを確認します。
③ 理由は具体的に示されているか
根拠条文や「要件を満たさない」という結論だけが 記載されていても、申請者は、 どの事実が問題とされたのかを理解できない場合があります。
どの資料、どの事実、どの審査基準の適用によって 不許可という結論になったのかが、 申請者に理解できる程度に示されているかを確認します。
④ 行政庁が認定した事実に誤りはないか
行政庁が提出資料を読み違えている、 提出済みの資料を十分に評価していない、 事実関係を誤って理解している可能性もあります。
通知書の記載と、提出した申請書・添付資料・説明内容を 一つずつ照合することが重要です。
⑤ 審査基準は適切に適用されているか
行政手続法第5条は、行政庁に対し、 許認可等の判断に必要な審査基準を定めることを求めています。
公表されている審査基準がある場合には、 その基準のどの部分が適用されたのか、 事案への当てはめが合理的かを確認します。
「根拠条文と原因事実が書かれていれば十分」ではない
「理由は具体的に示されなければならない」と説明されても、 具体性に欠けるとはどのような状態なのか、 イメージしにくいかもしれません。
そこで、理由提示制度の意味を具体的に理解していただくため、 最高裁判所の重要な判例をご紹介します。
- 事件名
- 一級建築士免許取消処分等取消請求事件
- 裁判所・裁判年月日
- 最高裁判所第三小法廷・平成23年6月7日判決
- 事件番号
- 平成21年(行ヒ)第91号
- 判例集
- 最高裁判所民事判例集65巻4号2081頁
- 問題となった条文
- 行政手続法第14条第1項本文
どのような事件だったのか
この事件では、一級建築士に対して免許取消処分が行われました。
処分通知書には、建築基準法令に適合しない設計を行ったことなどの 処分原因となる事実と、 建築士法上の根拠条文が記載されていました。
しかし、当時公表されていた処分基準のうち、 どの基準をどのように適用して、 複数の懲戒処分の中から「免許取消し」を選択したのか は示されていませんでした。
最高裁判所はどう判断したのか
最高裁判所は、通知書の記載だけでは、 処分を受けた本人が、 どのような理由と処分基準の適用によって 免許取消処分が選択されたのかを知ることができないと判断しました。
そして、この免許取消処分は、 行政手続法第14条第1項本文が求める 理由提示の要件を欠き、違法であるとしました。
理由が不十分になり得る例
「関係法令の許可要件を満たしていないため、 本申請を不許可とする。」
これだけでは、どの要件が、 どの事実によって満たされないと判断されたのかが分かりません。
理由を理解しやすい例
「○○法第○条の財産的基礎の要件について、 提出された決算書では基準額を満たすことを確認できないため、 本申請を不許可とする。」
何が問題とされたのかを把握し、 再申請や審査請求を検討しやすくなります。
この判例は、行政手続法第14条の 「不利益処分における理由提示」が問題となった事案であり、 第2回の中心条文である行政手続法第8条の 「申請に対する拒否処分」の事案ではありません。
もっとも、第8条と第14条には、 行政庁の判断過程を相手方に明らかにし、 不服申立てなど今後の対応を検討できるようにするという、 理由提示制度に共通する考え方があります。
その共通する考え方を、一般の事業者の方にも 具体的に理解していただくための参考事例として紹介しています。
理由が不十分に見える場合に確認すること
不許可通知書の記載が抽象的で、 何が問題とされたのか分からない場合には、 直ちに「違法だ」と決めつけるのではなく、 次の資料や事情を確認します。
- 不許可通知書に記載された全文
- 根拠法令、条例、規則および告示
- 公表されている審査基準
- 申請書および添付資料の控え
- 補正依頼や追加資料提出の履歴
- 行政庁とのメール、電話、面談の記録
- 申請前後に行政庁から説明された内容
不許可通知書だけでは理由が十分に分からなくても、 申請過程における説明や補正の経緯などを含めて 判断される場合があります。
そのため、通知書だけを切り離して見るのではなく、 申請から処分までの経緯を時系列で整理することが重要です。
「理由が短い」ことと「理由提示が不十分」であることは同じではありません
不許可通知書の文章が短いからといって、 直ちに理由提示が違法となるわけではありません。
重要なのは文章量ではなく、 申請者が、どの法令・要件・事実に基づいて 不許可となったのかを理解できるかどうかです。
反対に、長い説明が書かれていても、 抽象的な言葉が並ぶだけで、 具体的な判断過程が分からなければ、 今後の対応を適切に検討できません。
まず、不許可通知書、申請書の控え、添付資料、 補正履歴、行政庁とのやり取りを一つにまとめ、 「行政庁がどのような判断過程をたどったのか」 を確認することが出発点となります。
第3回
審査請求ができる案件・できない案件
行政機関の判断や対応であれば、 すべて審査請求の対象になるわけではありません。
行政不服審査法上の「処分」とは何か、 不作為に対する審査請求との違い、 特定行政書士が代理できる範囲を解説します。
法的根拠(第2回の主な条文・判例)
- 行政手続法第5条
- 審査基準の設定および公表
- 行政手続法第8条
- 申請に対する拒否処分の理由提示
- 行政手続法第14条第1項
- 不利益処分の理由提示
- 最高裁判所第三小法廷平成23年6月7日判決
- 平成21年(行ヒ)第91号・ 一級建築士免許取消処分等取消請求事件・ 民集65巻4号2081頁