FE-05では外国人採用の基本フロー、
FE-06では不法就労助長罪と企業の確認実務を整理しました。
外国人を適法に採用し、
在留資格・就労可否を確認したあとにも、
企業には重要な手続があります。
それが、
「外国人雇用状況の届出」です。
この届出は、外国人を
雇い入れたときだけではなく、離職したときにも必要です。
また、
雇用保険の被保険者となる外国人と、
被保険者とならない外国人では、
使用する様式・届出方法・期限が異なります。
1.外国人雇用状況届出とは
外国人雇用状況届出は、
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
職業生活の充実等に関する法律」
に基づく、事業主の届出義務です。
事業主は、対象となる外国人を雇い入れた場合、
または雇用している外国人が離職した場合に、
氏名・在留資格等の必要事項を確認して届け出ます。
この制度の位置付け
外国人雇用状況届出は、
「外国人を採用するための許可申請」
ではありません。
外国人の雇入れ・離職の状況を、
雇用主である事業主が届け出る制度です。
2.誰が届出をするのか
届出義務を負うのは、
外国人を雇用する事業主です。
会社の規模は問いません。
例えば、
・大企業
・中小企業
・個人事業主
・店舗、飲食店等
・外国人アルバイトを雇う事業主
なども、対象となる外国人を雇用した場合には
届出義務があります。
派遣労働者の場合は「派遣元」が届出
【派遣労働者の場合】届出を行うのは派遣元事業主
外国人が派遣労働者として働く場合、
外国人雇用状況届出の義務を負うのは、
その外国人を雇用している
派遣元事業主です。
派遣先企業が外国人雇用状況届出を行うものではありません。
届出書の「雇入れ又は離職に係る事業所」についても、
派遣の場合には派遣先ではなく
派遣元の事業所を記載します。
ただし:
派遣先企業についても、
実際に外国人が従事する業務が
その在留資格で認められた活動の範囲にあるかなど、
適正な受入れのための確認は重要です。
3.届出の対象となる外国人・対象外となる外国人
【原則】届出対象
日本国籍を有しない外国人労働者を
雇い入れた場合・離職した場合が対象です。
例えば、
・技術・人文知識・国際業務
・特定技能
・留学(資格外活動によるアルバイト)
・家族滞在(資格外活動による就労)
・永住者
・定住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
なども対象となります。
【対象外】
次の方は外国人雇用状況届出の対象外です。
・在留資格「外交」
・在留資格「公用」
・特別永住者
よくある誤解
「永住者だから届出不要」
ではありません。
永住者、定住者、日本人の配偶者等なども、
日本国籍を取得していない限り、
原則として外国人雇用状況届出の対象です。
4.最重要|雇用保険の被保険者かどうかで届出方法が変わる
外国人雇用状況届出で最も混乱しやすいのが、
「雇用保険の被保険者となるかどうか」
による違いです。
① 雇用保険の被保険者となる外国人
外国人雇用状況届出だけのために
別の届出書を提出するのではありません。
雇用保険被保険者資格取得届
または
雇用保険被保険者資格喪失届
を提出することにより、
外国人雇用状況の届出を行ったことになります。
【雇入れ】
翌月10日まで
【離職】
離職日の翌日から起算して10日以内
② 雇用保険の被保険者とならない外国人
雇用保険の適用要件を満たさない
短時間労働者等が該当します。
この場合は、
外国人雇用状況届出書(様式第3号)
を使用します。
【雇入れ】
翌月末日まで
【離職】
翌月末日まで
注意:
雇用保険の被保険者となるかどうかは、
週所定労働時間だけでなく、
その時点で適用される雇用保険法上の要件に従って判断します。
5.一目で分かる|届出方法・期限一覧
| 区分 |
届出方法 |
雇入れ |
離職 |
雇用保険の
被保険者
|
雇用保険被保険者資格取得届・
資格喪失届
|
翌月10日まで
|
離職日の翌日から起算して10日以内
|
雇用保険の
被保険者でない
|
外国人雇用状況届出書
(様式第3号)
|
翌月末日まで
|
翌月末日まで
|
全部を「翌月末日まで」と覚えないでください。
雇用保険の被保険者か否かによって、
届出方法・期限が異なります。
6.届出の前に何を確認するのか
外国人雇用状況届出を行う際には、
外国人本人から在留カード、旅券等の提示を受け、
必要な届出事項を確認します。
STEP 1
本人確認
STEP 2
在留カード等確認
STEP 3
在留資格等確認
STEP 4
資格外活動等確認
STEP 5
届出事項記録
□ 氏名
在留カード等に記載された氏名を確認します。
□ 在留資格
現在の在留資格を確認します。
□ 在留期間等
在留カード等の最新情報を確認します。
□ 国籍・地域
在留カード等の記載を確認します。
□ 資格外活動許可
資格外活動によって働く場合には、
許可の有無・内容を確認します。
□ その他の届出事項
実際に使用する最新様式で
必要事項を確認します。
7.届出と「就労できるか」の確認は別
外国人雇用状況届出を提出したからといって、
その外国人を適法に働かせることができるという意味ではありません。
外国人を雇用する際には、
届出とは別に、
・在留資格
・就労制限
・資格外活動許可
・必要な指定書
・実際の仕事内容との適合性
等を確認する必要があります。
この点は、FE-03、FE-04、FE-06で詳しく整理しています。
8.在留カードのコピーをハローワークへ提出する必要はない
届出に必要な事項は、
外国人本人から提示された在留カード等で確認します。
外国人雇用状況届出に、
在留カード等の写しを添付する必要はありません。
一方、企業が自社の外国人雇用管理上、
在留カードの写し等を保管する場合には、
個人情報として適切に管理することが重要です。
FE-06で整理したように、
確認日、担当者、確認方法、確認結果等について
社内記録を残す運用も有効です。
9.届出はオンラインでもできる
雇用保険の被保険者の場合
雇用保険被保険者資格取得届・資格喪失届を
e-Govから電子申請できます。
雇用保険の被保険者でない場合
外国人雇用状況届出システム
からオンラインで届出できます。
電子申請への切替に注意
過去に一度でも紙等で
外国人雇用状況届出を行ったことのある事業主が
電子届出へ切り替える場合には、
厚生労働省の案内に従って
所定の切替手続が必要となる場合があります。
10.「入管への届出」と混同しない
外国人雇用実務で特に混同しやすいのが、
「外国人雇用状況届出」
と
「出入国在留管理庁への届出」
です。
| 項目 |
外国人雇用状況届出 |
入管関係の届出 |
| 主な根拠 |
労働施策総合推進法
|
出入国管理及び難民認定法等
|
| 主な提出先 |
ハローワーク
|
出入国在留管理庁
|
| 届出者 |
外国人を雇用する事業主
|
外国人本人・所属機関等、
制度によって異なる
|
| 期限 |
雇用保険の被保険者か否か等によって異なる
|
各届出制度によって異なる
|
「外国人関係の届出は全部14日以内」
ではありません。
届出制度ごとに、
・誰が届けるのか
・どこへ届けるのか
・何を届けるのか
・いつまでなのか
を区別してください。
11.留学生アルバイトも届出対象
「正社員ではないから届出不要」
という考え方は誤りです。
外国人留学生をアルバイトとして雇用した場合も、
原則として外国人雇用状況届出の対象となります。
留学生の場合は、
外国人雇用状況届出だけでなく、
資格外活動許可の確認も必要です。
資格外活動許可による就労には、
活動内容・時間等の制限があります。
したがって、
「届出をした=適法に働かせられる」
ではありません。
12.短期間で雇入れ・離職した場合
雇用保険の被保険者とならない外国人を
短期アルバイト等として雇用し、
届出期限が来る前に離職する場合があります。
厚生労働省Q&Aでは、
このような場合には、
雇入れと離職をまとめて届け出ることが可能
とされています。
例
8月5日 雇入れ
8月20日 離職
この場合、
様式第3号に雇入れ日・離職日の双方を記載して、
まとめて届け出ることが可能です。
13.届出を忘れた場合・虚偽の届出をした場合
外国人雇用状況届出は、
任意の行政サービスではありません。
法律上の届出義務です。
届出を怠ったり、
虚偽の届出を行った場合には、
30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
「忙しかった」
「担当者が知らなかった」
といった理由で、
企業としての届出義務そのものがなくなるわけではありません。
14.企業では「誰が届けるか」を決めておく
外国人雇用状況届出で起こりやすい問題は、
制度を知らないことだけではありません。
社内で誰が確認し、
誰が届出を担当するのか決まっていないこと
も届出漏れの原因となります。
企業内の基本フロー
採用担当
↓
在留カード・就労可否を確認
↓
人事・労務担当へ情報連携
↓
雇用保険の被保険者となるか確認
↓
該当する方法・期限で届出
↓
届出日・方法・担当者を記録
15.企業向けチェックリスト
□ 届出対象者か
外国人雇用状況届出の対象となる外国人労働者か確認した。
□ 対象外ではないか
外交・公用・特別永住者に該当しないか確認した。
□ 派遣労働者ではないか
派遣労働者の場合は、雇用主である派遣元事業主が届出を行うことを確認した。
□ 在留カード等を確認したか
必要な届出事項を本人から提示された資料で確認した。
□ 就労可否を確認したか
届出とは別に、適法に予定業務へ従事できるか確認した。
□ 雇用保険の適用を確認したか
雇用保険の被保険者となるか、現行の適用要件で判定した。
□ 正しい様式を使用したか
資格取得・喪失届又は様式第3号を正しく使い分けた。
□ 届出期限を確認したか
雇入れ・離職それぞれの期限を確認した。
□ 最新様式か確認したか
提出時点の厚生労働省・ハローワークの最新様式を確認した。
□ 届出記録を残したか
届出日、方法、担当者等を社内記録に残した。
16.今後の制度変更にも注意|2027年・2028年
① 2027年4月1日|外国人雇用状況届出の新様式
厚生労働省はすでに、
2027年4月1日から使用する
外国人雇用状況届出書(様式第3号)等
を公表しています。
社内フォルダに保存した古い様式を
そのまま使い続けないこと。
届出の際には、
その時点で厚生労働省・ハローワークが公表している
最新様式を確認してください。
② 2028年10月1日|雇用保険の適用対象が拡大
雇用保険法等の改正により、
雇用保険の被保険者要件のうち
週所定労働時間の基準が変更されます。
現在
週所定労働時間20時間以上
↓
2028年10月1日以降
週所定労働時間10時間以上
この改正によって、
現在は雇用保険の被保険者とならず、
外国人雇用状況届出書(様式第3号)で届け出ている
短時間労働者の一部が、
将来は雇用保険の被保険者となる可能性があります。
外国人雇用状況届出への影響
外国人雇用状況届出は、
雇用保険の被保険者か否かによって
届出方法が異なります。
したがって、
2028年10月1日以降は、
「この外国人が雇用保険の被保険者となるか」
という判定にも、
改正後の要件を使用する必要があります。
※2026年8月31日現在は、
週所定労働時間については現行の
「20時間以上」の要件が適用されています。
「10時間以上」への変更は
2028年10月1日施行です。
※雇用保険の適用は週所定労働時間だけでなく、
その他の適用要件も含めて判断してください。
17.FE-07のまとめ|「雇った時」と「辞めた時」を忘れない
外国人雇用状況届出で、
まず企業が押さえたいポイントは次のとおりです。
① 外国人を雇い入れたら届出
② 外国人が離職した場合も届出
③ 雇用保険の被保険者か否かで
届出方法・期限が変わる
④ 派遣労働者は派遣元事業主が届け出る
⑤ 届出前に在留カード等で必要事項を確認する
⑥ 「届出」と「適法に就労できるかの確認」は別
⑦ 届出日・担当者・方法を社内記録として残す
外国人雇用状況届出を
「人事担当者が覚えていればよい手続」にするのではなく、
採用 → 確認 → 雇用保険判定 → 届出 → 記録
という企業の標準フローに組み込むことが重要です。
18.主な法的根拠・公的確認先
基準日:2026年8月31日
本ページは、
労働施策総合推進法、関係省令、
厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」、
公式Q&A等の公表資料を基に、
企業の外国人雇用実務の観点から整理しています。
届出様式、雇用保険の適用要件等は
法改正・制度変更によって変更される場合があります。
実際の届出時には、
厚生労働省・ハローワークの最新情報をご確認ください。