★FE-09 外国人雇用で企業が負う責任

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FE-09 外国人雇用で企業が負う責任

入管・労務・届出・安全衛生・雇用管理を横断し、 外国人を雇用する企業の責任を経営視点で整理します。

基準日:2026年9月14日
FE-03からFE-08まで、 外国人を雇用するために企業が確認すべき制度を 一つずつ整理してきました。

在留資格、在留カード、不法就労、 外国人雇用状況届出、労働法。

では、これらを企業経営の視点からまとめると、 外国人を雇用する企業は どのような責任を負っているのでしょうか。

FE-09では、 外国人雇用を単なる「入管手続」や「人事手続」としてではなく、 企業全体のコンプライアンス・雇用管理の問題 として整理します。

1.外国人雇用の責任は一つの法律だけでは決まらない

外国人雇用では、 一つの法律だけ守ればよいわけではありません。

入管・在留管理 在留資格、就労可否、在留期間、資格外活動等。
労働法 賃金、労働時間、休憩、休日、解雇、安全衛生等。
社会保険・雇用保険 各制度の適用要件に基づく加入・届出。
外国人雇用状況届出 雇入れ・離職時のハローワークへの届出。
安全衛生 本人が理解できる方法による教育・災害防止。
雇用管理 職場適応、相談体制、再就職援助等。
外国人雇用は、 「入管」「人事」「労務」を別々に処理するだけでは不十分です。

企業として、 複数の制度を横断して管理する必要があります。

2.責任①|適法に働ける外国人を雇用する

外国人を採用する企業は、 採用予定者が 予定する業務に適法に従事できるか を確認する必要があります。

STEP 1 本人確認
STEP 2 在留資格確認
STEP 3 就労制限確認
STEP 4 許可・指定書確認
STEP 5 仕事内容と照合

「在留カードを持っている」 というだけで判断してはいけません。

在留資格、就労制限、資格外活動許可、 必要な指定書、実際の仕事内容まで確認します。

確認を怠って不法就労をさせた場合、 企業・事業主側にも 不法就労助長罪が成立する可能性があります。

3.責任②|適正な労働条件を確保する

外国人にも、 労働基準法、最低賃金法等の 労働関係法令が原則として適用されます。

賃金 最低賃金を守り、適正に支払う。
労働時間 法定労働時間、休憩、休日等を適正に管理する。
時間外労働 36協定や割増賃金等のルールを守る。
国籍による差別をしない 国籍そのものを理由として、 労働条件を差別的に扱わない。
外国人雇用管理指針は、 外国人労働者についても 労働・社会保険関係法令を遵守し、 適正な労働条件を確保することを 事業主に求めています。

4.責任③|労働条件を「理解できる形」で伝える

労働条件を明示するだけでなく、 外国人本人が内容を理解できるようにすることが重要です。

外国人雇用管理指針では、 賃金・労働時間等の主要な労働条件について、 外国人労働者が理解できるよう内容を明らかにした書面を 交付することが示されています。

特に説明したい事項

・賃金の計算方法
・税金
・社会保険料
・控除
・労働時間
・休日
・契約期間
・勤務地
・担当業務

「契約書にサインしたから説明責任は終わり」 という考え方ではなく、 本人が主要な条件を理解できているか を意識した運用が重要です。

5.責任④|外国人雇用状況を適切に届け出る

外国人を雇い入れた場合、 または外国人が離職した場合には、 外国人雇用状況届出が必要です。

「入社時だけ」ではありません。 離職時にも届出が必要です。

また、 雇用保険の被保険者となる外国人と、 被保険者とならない外国人では、 届出方法・期限が異なります。

外国人雇用状況届出については、 FE-07で詳しく整理しています。

6.責任⑤|社会保険・雇用保険を適正に処理する

外国人だからという理由で、 健康保険、厚生年金、雇用保険等の対象から 自由に除外できるわけではありません。

外国人本人が 「加入したくない」 と希望しても、 法律上適用される場合には 必要な加入手続を行います。

企業は、 国籍ではなく、 それぞれの社会保険・労働保険制度の 適用要件に従って判断します。

7.責任⑥|安全衛生を確保する

外国人労働者にも、 労働安全衛生法等に基づく安全衛生管理が必要です。

特に外国人雇用では、 言葉の違いによって 安全上の指示が正確に伝わらないリスクがあります。

企業は、安全衛生教育を 外国人本人が理解できる方法で行うことが重要です。

例えば、
・やさしい日本語
・母国語資料
・図解
・写真
・動画
・実演

などを活用します。

安全教育は、 「説明した」ではなく、 理解されたか まで意識する必要があります。

8.責任⑦|職場への適応・雇用管理を行う

労働施策総合推進法では、 外国人を雇用する事業主について、 外国人労働者が能力を有効に発揮できるよう、 職場への適応を容易にするための措置その他の 雇用管理改善を図ることが求められています。

雇用管理 労働条件、社会保険、在留管理等を適切に管理する。
職場適応 日本の職場ルール等について必要な説明を行う。
相談体制 外国人労働者が相談できる窓口・担当者を明確にする。
能力発揮 在留資格の範囲内で能力を発揮できる配置・雇用管理を行う。

9.責任⑧|解雇時にも配慮が必要

外国人だから簡単に解雇できるわけではありません。

労働法上の解雇ルールが適用されることに加え、 外国人雇用管理指針では、 事業規模の縮小等によってやむを得ず解雇等を行う場合、 再就職を希望する外国人労働者に対して、 必要な再就職援助を行うよう努めること が示されています。

再就職援助の例

・関連企業へのあっせん
・求人情報の提供
・教育訓練
・職業紹介機関等の案内

外国人の場合は、 転職後に従事する仕事が 本人の在留資格に適合するかも重要です。

10.外国人を常時10人以上雇用する企業は「雇用労務責任者」を選任

外国人雇用管理指針では、 外国人労働者を常時10人以上雇用するとき は、 外国人労働者の雇用管理に関する事項を管理させるため、 人事課長等を 「雇用労務責任者」 として選任することとされています。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

外国人10人以上になったら、 「誰が外国人雇用管理全体を見るのか」 を明確にする。

雇用労務責任者は、 外国人雇用を一人で全部処理する人という意味ではありません。

人事・労務・現場・経営層・専門家の間をつなぎ、 外国人雇用管理の責任体制を明確にする役割 と考えると分かりやすくなります。

11.責任は「人事担当者だけ」のものではない

外国人雇用のトラブルでは、

「採用担当者が知らなかった」
「店長が勝手に働かせた」
「現場で仕事内容が変わっていた」

といったケースが起こり得ます。

外国人雇用を担当者個人の知識だけに依存すると、 確認漏れが起こりやすくなります。

企業として、 役割分担と確認ルートを作ることが重要です。

STEP 1 採用担当
STEP 2 人事・労務
STEP 3 現場責任者
STEP 4 雇用労務責任者
STEP 5 経営層

12.企業責任を「採用から退職まで」で見る

段階 企業が確認・対応する主な事項
募集 業務内容、労働条件、在留資格との適合性を意識した求人設計。
採用 在留資格、在留カード、就労制限、資格外活動等の確認。
契約 労働条件を明示し、本人が理解できるよう説明。
入社 在留状況の再確認、社会保険等の手続、外国人雇用状況届出。
就労中 労働時間、安全衛生、在留期間、仕事内容、配置変更等を継続管理。
更新・変更 在留期間更新や仕事内容変更時に、在留資格との適合性を再確認。
退職 労務上の退職処理、外国人雇用状況届出、必要に応じ再就職援助。

13.企業が負うリスクを整理する

リスク 主な内容
入管法上のリスク 不法就労助長、在留資格との不適合等。
労務リスク 最低賃金、残業代、労働時間、解雇等の法令違反。
届出リスク 外国人雇用状況届出の漏れ・虚偽届出等。
安全衛生リスク 安全教育不足、指示の不理解、労働災害等。
社会保険リスク 健康保険、厚生年金、雇用保険等の適用漏れ。
信用リスク 行政対応、取引先、金融機関、採用活動等への影響。

14.企業向けチェックリスト

□ 在留資格確認 予定業務に適法に従事できることを確認した。
□ 在留カード確認 就労制限、在留期間、資格外活動等を確認した。
□ 労働条件 労働法令に沿った条件を設定し、本人に説明した。
□ 社会保険 各制度の適用要件を確認し必要な手続を行った。
□ 外国人雇用状況届出 雇入れ・離職時の届出体制を整えている。
□ 安全衛生 本人が理解できる方法で安全衛生教育を行っている。
□ 在留期限管理 更新期限を把握し、期限前に確認する体制がある。
□ 配置変更管理 仕事内容変更時に在留資格との適合性を再確認している。
□ 相談体制 外国人労働者が相談できる担当者・窓口を明確にしている。
□ 雇用労務責任者 外国人労働者を常時10人以上雇用する場合の選任を確認している。
□ 退職時手続 届出・労務処理・必要に応じ再就職援助を行う体制がある。
□ 記録 確認・届出・判断の記録を社内で残している。

15.企業責任は「違反しないこと」だけではない

外国人雇用の企業責任というと、 「罰則を受けないための管理」 だけを想像しがちです。

しかし、 外国人雇用管理指針が求めているのは、 単なる違反防止だけではありません。

適正な労働条件を確保する



安全に働ける環境を作る



在留資格の範囲内で能力を発揮できるようにする



職場への適応を支援する



必要に応じて再就職も支援する

つまり外国人雇用は、 「雇ったら終わり」ではなく、 採用から退職まで継続して管理する企業活動 です。

16.FE-09のまとめ|外国人雇用は「会社の仕組み」で管理する

適法に採用する

適正な労働条件を設定する

本人が理解できるよう説明する

届出・社会保険を適切に処理する

安全衛生・職場適応を支援する

在留期間・仕事内容を継続管理する

退職まで適切に対応する

外国人雇用で企業が負う責任は、 一つの担当部署だけでは完結しません。

採用・人事・労務・現場・経営層が連携し、 会社として管理する仕組みを作ること が重要です。

17.主な法的根拠・公的確認先

基準日:2026年9月14日

本ページは、 出入国管理及び難民認定法、 労働施策総合推進法、 労働基準法、 外国人雇用管理指針、 出入国在留管理庁・厚生労働省の公表資料等を基に、 外国人雇用における企業責任を整理しています。

在留資格、雇用形態、 外国人労働者数、受入制度等によって 企業に求められる対応は異なります。
個別案件では、 最新の法令・告示・運用要領・公的資料等を確認してください。
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